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スズメとの会話


何年もスズメにご飯をあげている。
玄米を炒った、所謂、炒米というものだ。

炒米とは、戦国時代のMRE(戦闘糧食)で、
そのままポリポリと食べることも出来るし、
お湯に浸せばご飯にもなるという便利な携帯食だ。
似たもので、干飯というものもある。
とにかく、立派な食べ物であるのだが、
家の近所のスズメさんたちは
贅沢にもこの炒米を食していらっしゃる訳だ。

朝、雨戸を開ける音に反応して
スズメたちは集まってくる。
炒米をお皿に移す間、
お隣の屋根に列を成して
行儀よくこちらの様子を伺っている。
千代、千代、といって鳴くが、
早よせい、早よせい、と云っているように聞き取れる。

中には待ちきれずに
周囲を飛び回っている者もある。
バサバサバサという羽音が聞こえる。
空気を掻く音。
鳥の運動量とはこれほどであるのか、と驚く。

室内に入って窓を閉じ、カーテンを閉めると、
スズメたちの食事が始まる。
幸せそうな穏やかな囀り。
時折の、チチチチ!と激しく鳴く声。
自分がスズメたちの人生の一部になったような、
そんな甘い錯覚に心が安らかになる。
平穏とはこういったことであるか、などと
一人うっとりとする。

出勤が早い日、辺りがまだ真っ暗のうちに
炒米を準備する。
スズメ達の姿は見えない。
見上げた空に月。

月は一人気高く煌々と世界を照らし、
私は勤務前の緊張に身を震わせる。

翌日の朝、
炒米を準備する為に庭へ出る。
前日、確かに丘を成していた炒米は
綺麗になくなっている。
空中に吊るしたお皿だ。
スズメさんたちが食さない限り無くなることはない。
ハタハタと飛んで集団で集まってくる
彼らの姿が目に浮かぶ。
米粒をついばむ姿が目に浮かぶ。
新しく炒米をお皿へ。…

私たちは確かに交流している。
空になったお皿を見るたびに、
なんだか手紙のやり取りをしているように感じて
愛おしい気持ちに身震いしそうになる。

月は笑って見下ろしている。




読んでくださった方、ありがとうございます。
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