私は酒が好きだ。
特に好きなのが最初の一口で、
しらふの状態から
急激に酔いに侵食されてゆく瞬間が好きだ。
胃に流れ込んだ酒が吸収され、
あっという間に脳に影響を始めるあの瞬間だ。
真っ白い紙を真っ黒な墨汁が染めてゆくような、
乾いた砂に打ち寄せる波が染み込んでゆくような、
突然の驟雨に世界が洗われてゆくような、
なんともいえない、この、
抗えない力による侵略を体験出来るのが
飲酒に於ける最初の楽しみであるように思う。
然し、残念なことにこの感覚を味わえるのは
ほんの一瞬のことで、
うむ!きたぞ!
などと叫んで、馬上杯を掲げて立ち上がり、
至福に身を震わせた後は
延々、ちびちびと飲むだけの平坦な道となる。
旅客機に例えることができる。
離陸からの急激な上昇、
おぉ、飛行機に乗っているのだ!
と、実感できる瞬間だ。
アムロ行きます!といった興奮。
然しこの後は延々と1万メートル付近を水平飛行。
稀に乱気流などアクシデントがあるところも似ている。
クライマックスはやはり、最初の始まりの発端にあるのだ。
とりとめのない文を書いている。
実はこれから歯医者なので、
目を背けようとして自分の好きなことを語っている、という訳だ。
私は歯医者が怖い。
読んでくださった方、ありがとうございます。
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