損失の連続


作家の名前は忘れたが、
十年くらい前にこんな短編を読んだ。


あるところに男がいた。
平凡で、何処にでもいるような男ではあったが、
男は努力して新築の家を建てた。

丘の上に悠然と存在するその家には、
愛する妻と子があった。
暖かい家族、帰るべき住処、
人生の安らぎに無条件で浸れる約束の地…
要するに、その丘のうえには男の全てがあった。

男は、今、丘のふもとの酒場から
静かに一人でグラスを傾け
美しく実った幸福の果実を眺めている。
男はその時間を幸福だと感じた。

併し男は、
世にも恐ろしいある事実に気付く。
「この幸福もいつかは終わるものなのだ。…」


恐怖による動揺は男を
妄想の沼へと引きずり込む。

近い将来必ずくるであろう老い。
老いた姿の自分がこの酒場から、
同じように丘の上の家を見上げている。
其処には最早、灯りはともっておらず、
老朽化した家は夜風に吹かれて
不気味に軋みながらぼんやりと存在している。
家は荒廃し、家族を失い、
最早老いて死んでゆくだけの自分が、
一人で酒を飲みながら、
真っ暗な丘の上の家を見上げてこう呟くのだ。
「あの頃はなんて幸せだったのだろう。……」

きっと来るであろうこの未来に、
男は悲しみの涙を流し、この話は終わる。
(大体大筋こんな話だったと思う)



さて、このように、
恐怖による妄想とは恐ろしいものです。
こんな考えに取り憑かれていれば、
未来は自然と荒廃の道へ繋がってゆくでしょう。
莫妄想、妄想することなかれ。

どうせ考えるなら
もっと楽しい可能性を追求したほうが
いいに決まっているのですが、
人間とは不便なもので、
何故か恐怖に支配されがちです。
実にいけません。

こういう時は津軽のあれを
声に出して読むに限ります、即ち、
さらば読者よ、命あったらまた他日。
絶望するな、元気でゆこう、では失敬!





いつも読んでくださっている皆様、有難う御座います。
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