ハンカチ


先日何気なくテレビをつけていたら、
脳死と判定された子供の臓器が
他の子供へ移植されることになった、
ト、伝えるニュースを目にした。

会見で、ドナーの母親が、臓器提供へと至った経緯や
思いなどを話しておられたが、
その様子があまりにも淡々としていたので
私は少々の違和感をおぼえた。

子供の死という、
自分たちの身にかかった
おそらくこの世で考えられる最も過酷な運命のなか、
母親のその冷静な態度は
現実認識に至るまでのショック状態にあるようにも見えたが、
しかし、言葉の端々には
悲しみを無理に噛み殺しているような
発声の詰まりがあるようにも感じられた。

それからなにか釈然としないまま
数日を過ごしたが、
ある時、何かのきっかけで突然、凡てがわかった。
あっと声をあげるほどであった。
あの母親は、芥川龍之介の「手巾」だったのだ!

闘病の末に亡くなった息子の死を
その恩師である大学教授に報告する母親。
平然とし、微笑みすら浮かべているかのような
母親の態度に違和感を持った教授であったが、
ふとしたことから、
この母親の手がテーブルの下でハンカチを握って
引き裂かんばかりに震えているのを目にする。

これが「手巾」のあらすじであるが、
あのニュースでの会見は
まさにこれではなかったのか?
母親は、冷静を装ってはいたが、
実は全身で泣いていたのではなかったのか?
取り乱すことを恥とする
古来よりの日本の武士道精神が、
あの時、あの会見で、
母親にあのような態度を取らせたのではなかったのか?…

昔気質の美しい日本人はもういない、とよく云われる。
併し本当にそうだろうか?
表向きは現代人であっても、
やっぱり私たち日本人の精神の根底には
美しく誇り高い武士道精神が生きているのではないだろうか。
その現出が、
あの会見でのあの母親ではなかろうか、ト、
私は感ずる。

やっぱり大和の女郎花、である。
その高潔な姿には涙を禁じえない。






いつも読んでくださっている皆様、有難う御座います。
スポンサーサイト

| はなそらDAYz!ホーム |

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURL:
http://hanasora0526.blog72.fc2.com/tb.php/1910-7353ffa3
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザーのみ)