他人を使って名を上げよ


* 最近また、我が人生の指南書である
三島由紀夫の「不道徳教育講座」という
ちょっぴり皮肉でユーモアに富んだエッセイを
空き時間にむさぼり読んでいます。
恥ずかしながら、今回ちょっとその口調を真似てみます。
「不道徳」という前提ですので少々ハメを外していますが、
どうぞ冗談と笑い飛ばして下さい。…



他人を使って名を上げよ

自分では何もせずに
常に人の力ばかりを当てにしている人種というのは
何処にでもおりますもので、
このような人たちは事あるごとに
他を使って己を利する
上手い方法ばかり考えています。

自分の実力を如何に向上させるか、という
オーソドックスな方法に思慮を巡らる事はないので、
ますます事の処理が出来なくなってゆき、
畢竟、他人を利用するしか手段がなくなってしまうのです。

そして困った事に、
日頃からそうした術ばかり考えているので
その腕前に於いてはどんどん熟練してゆくのです。
最早、技術と呼んでも差し支えないでしょう。

彼らは実に様々な方法で
他人からの支援を引きだそうとします。

同情を買うように弱々しく振舞ったり、
お追従の言葉を並べ上げたり、
知恵の限りを尽くして他人を動かし
平身低頭して感謝の意を表しますが
下を向いた顔は
ペロリと舌をだしたりしているのですから
実に油断なりません。

然しながら、中々のしたたか者ですので、
ある意味抜け目のない策士とも云えるでしょう。

こういった人たちを
冷たくあしらってはいけません。
たとえ方向性が間違っていようとも、
彼らは必死な人たちです。
その一見姑息な手段が
彼らの生き残りをかけた戦略である以上は、
私たちはさりげなく
風にタンポポを飛ばすように、
つとめて自然に手を差し伸べなければなりません。
窮鳥懐に入れば猟師も是を撃たず、と云いますが、
ここに或る種の「美学」が発生し、
それは私たちの存在を
今より更に美しく見せることになるでしょう。

さて、美学とは一体何を指すのでしょうか?
敢えて云います、サムライの精神です。


もう一昔前になりますが、
「七人の侍」という映画がありました。
山賊に襲われて壊滅の危機に瀕する村が、
侍(浪人)を雇って村を防衛するというストーリーです。
身体を張った命懸けのミッションにも関わらず
成功しても何の功名もあがることなく、
危険ばかりで
割に合わない馬鹿々々しい依頼ですけれども、
侍たちは是を引き受けます。
そして村を守る為に次々と死んでゆくのです。

多くの戦いの後、ついに山賊を撃退し、
村の安全が保障されたところで
この映画は終わります。
しかしラストは決して大団円とは云えません。
村の民たちは恩人であるはずの侍たちを
無碍に扱い、もう用済みだ、とばかりに
半ば追い出すような態度に豹変してしまうからです。
「お侍さま~!」と、地面に膝をついて
泣きついていた姿は、最早ありません。

然し、生き残った何人かの侍たちは、
そんな村人たちの態度に怒ることもなく、
静かに去ってゆきます。
「勝ったのは彼らだ、儂たちではない。」
と、言い残して…。


私はあの高潔な精神にサムライを見ました。
私たちのその心に
サムライの精神が生きているのなら、
懐に飛び込んでくる窮鳥を
決して追い払ってはいけません。
その鳥は、安全を確認したら、
さっさと飛び去って、
しかも、私たちの頭にフンを落としてゆくでしょう。
然しそれでも私たちは、
涼しい表情でこう云わなければならないのです。

勝ったのはあの鳥だ。
儂らではない。


これだけ聞けば、
なんだか馬鹿をみたような気になるかもしれません。
しかしこの話は美学だけに収まらず、
実学に於いても実は有効です。
何故なら、私たちの周囲の人たち、
彼らこそ、映画「七人の侍」を観終わって
感動や義憤をおぼえた観客に相当する存在だからです。
皆が私たちを見ているからです。

世の策士たちは、
他人を利用して生き残りを果たし、
利用される側はその功績によって名を上げる。
この図式を良く見てみて下さい。
誰も損をしていないばかりか、
なんと、関係者全員が幸福な状態にありますね。
ここに一つの社会的基本相互作用が見事に完結した
理想の人間関係があるように思えます。

そして私たちは決して使い捨てにされたわけではなく、
他人を支援する事によって
しっかり名を上げるという利益を生み出していますので、
利用されたようで、実は他人を見事に利用していますので、
決して妙な屈辱感に捕らわれることはありません。




いつも読んでくださっている皆様、有難う御座います。
スポンサーサイト

| はなそらDAYz!ホーム |

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURL:
http://hanasora0526.blog72.fc2.com/tb.php/1854-7299ec61
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザーのみ)