大室山にて


いつの春だったか。
私は大室山の麓の公園にゴロリと寝転び、
傍らにきちんとお座りした
花とそらを見上げていた。

手を伸ばせば、
FCRのほっそりとした特徴的な顎に手が届く。
呼びかければ、
すぐにこちらに視線をむけてくれる。
毛並みは柔らかく、
身体は生きる意志に満ちて温かい。

私はこの時、
今そこにある確実な幸福を楽しみながら、
常に目を背けていた絶対の恐怖も感じていた。
<この幸福はいつまで続くのか>

手の中にある安心の前に
薄ぼんやりと霞む予感ではあったが、
私はその時、確かに狼狽をおぼえた。
日常が壊れるという
生あれば不可避の千古の法則は、
小さな錐針となって
いつも私の心のどこかに
深く鋭く突き刺さっていたが、
その時は何故だか
その恐怖が鮮明に感じられたのだ。

現実から目を背けることが
私の解決法だった。
盲目的に永遠を信じて疑わず、
考える事を意識して放棄したのも、
損失の恐怖と戦い続けてきた私の弱い心が生み出した
最良の防衛策だった。
然し、いつか本当にそんな将来が来てしまうのか、と、
幸福の頂から
それから後はもう降下してゆく一本道しかないと悟った時、
私は再び、現実を直視することを拒んだ。

あれは、いつの春の日だったろうか。




いつも読んでくださっている皆様、有難う御座います。
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