山頂にて


少し前のことであるが、
私は甲斐のある山に登った。

山といってもそこは景観地で、
様々な地球の運動によって現出した
奇怪な岩々に地学的な歴史を感じながら
ハイキング用にしっかりと整備された小径を
登るだけの事ではあるのだが、
数時間の登り道は、まぁやはり、
ちょっとした登山といっても叱られはしまい。

さて、肩で息をしながらなんとか頂上に到着したが、
そこで私は驚きの光景を目にした。

頂上に近づくにつれて、
なにやら登山とは無縁のハイカラな姿の若者たちが
やたらと目につくようになったのは
この為だった。

なんと、山の裏側には舗装された
大きな道路が通っており、
たくさんの観光バスがひっきりなしに
人をはきだし、飲み込んでいたのだ。

ほほう、なるほど。
この手があったか。

私は思わず手を打って、うむ、ト頷いたが、
山岳信仰と山道を登る苦行がセットであるかのように、
頂上から眺める美しい景色は
苦難を乗り越えた者にのみ与えられる
特権でなければならないはずなので、
不公平だ、などという思いも、まぁ、あるにはあった。

私の考えだと、
山頂に立つ者の顔とは厳しくも爽やかで、
汗に輝いていなければならない。
決して乗り物疲れの
不健康な疲労の表情ではいけないのだ。

それは、
身体を動かしてきた者のみが出せる表情、
厳しく寄せた眉の間には縦皺が深く刻まれ
目は遠くを見るような虚ろな半眼であり
その口は荒い呼吸にあえぎながらも
水筒につめた清水を喉を鳴らして一気に飲み干し
全身で水の有難さを感じつつ
同時に何かを達成した歓びに打ち震え、
疲労の中にもどこか清々しい爽やかさを漂わせて
厳しいなかにも幽かな微笑を含んでいなければならない、ト云う
複雑なものであるべきなのだ。
決してつづら折りの後の
車酔いの表情であってはならない。

…などと考えつつも、
時間の短縮と手間を考えたら
やはり車のほうが便利だな、ト思いなおし、
コーヒーでも飲んで一休みするか、と、
機嫌を回復した私はすっかりくつろいでいた。

使えるものは使って然るべき、というある旅の話。




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