250万年前の友人


ある晴れた春の日、
私は自転車を飛ばして近所の川沿いを北上した。

目的地はある河原の崖。
そこには、約250万年前、
即ち、新生代第三紀頃の地層が露頭しており、
化石の採掘で有名な場所だ。

かつて生命を成した有機体の塊が
岩石の中に閉じ込められている。
誰にも知られる事なく、
地中で静かに眠るこの痕跡を
ぜひ我が目で確かめ、

手で触ってみたい
探り当ててみたい

これら欲求は私の胸を内側から
激しい鼓動を以て打ち続け、
その動力はペダルへと力強く伝わった。

誰だったか、
西洋のある彫刻家が云ったこんな風な言葉、
「彫刻は石の中に既に存在しており自分はそれを掘り出しているにすぎない。」
この心境を味わえるかも知れない、などと、
とんでもない事を考えているうちに、
その場所へ到着した。

果たして化石は出た。

小さな二枚貝、巻貝、木片、
かつてこの世に生きて活動していた生命の痕跡たちが、
岩の割れ目から再び太陽の元にその姿を現した。

そのうち、変わった形の三角形の黒い化石が出てきた。
それは見事に岩石から生えだしたような形で
私の前に姿を現してくれた。

サメの歯……、だろうか?
ずいぶんと小さいようだが、
子供だったのだろうか?
そうだとすると、
なぜ成長することが能わなかったのか?
どんな事情があったのか。………?

今となっては、最早知る由もないけども、
この命は約250万年の昔、
確かに海を力強く泳いでいた事は
間違いのない事実だ。
今、私はその確かな証拠をここに探り当てた!


私はこの時、遥かなる時を超えて、
この子と一緒に雄大な海を泳いでいた。
何処までも何処までも一緒に泳いで、
私たちはきっといつまでも友達だ、と誓い合った次の瞬間、
突然の辺りが真っ白になって
気が付いたら
私はこの河原でこの歯の化石を手にしていた。


ミケランジェロではないが、
やはり私は、この岩石の中に
太古の友人の存在を感じていたのかも知れない。
時を経た友人の姿は変わってしまっていたけども、
心に触れる魂は、何ら姿を変えてはいなかった。
私たちは今夜、深い深い眠りの中で
あの日のように、
大きく広がる大海を何処までも泳いでゆくのだ。




A31MAR15 FSL 029a

B31MAR15 FSL 031a

C31MAR15 FSL 030a


名を「由利鮫ノ介」という。
D31MAR15 FSL 048a







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