石田佐吉、深く眠る


雀の世界にもいろいろなドラマがある。
彼らもまた、
人間と同じように悩み、喜び、毎日を懸命に生きているのだ。

これまで、福島市松、加藤虎之助のみた夢を綴ってきた。
今回は、石田佐吉の番であるが、さて……





石田佐吉、深く眠る

石田佐吉は時間を無駄にしない勤勉雀である。
常に学問に励み、武道の鍛錬を怠らない。
疲れたら読書で一息つくが、
読む本は当然のように古典文学ばかりである。
怠惰、無精、横着、怠慢、
これらは全て、彼の敵である。
ついでに、福島市松のような
乱暴で粗野で品性の欠片もない与太者も
彼の敵である。

佐吉は、一時間ぶんの活動を四十五分で行う。
こうする事によって、
かれの四十五分は一時間と同質となり、
四時間の経過のうちに
五時間ぶんの活動を凝縮した事になるのだ。
彼の一日は三十時間なのである。
時間を無駄にしないどころか、
最大限界以上に活用している。

さて、今、そんな密度の濃い一日を過ごし、
夜はもう一時を過ぎている。
就寝の時間だ。
学問はまだまだ足りない気がするが、
明日もあるのでここらで切り上げねばならない。
世の秀才、皆に言えることであろうが、
佐吉も又、自分の学問が何処までいっても
完成に近づく気がしないでいる。
一つ突破すれば又次が、
一つ先へ進めば更なる課題が、
大きく彼の前に立ちはだかる。
寝る暇などないが、然し、睡眠も必要だ。
佐吉にとっての睡眠は作業である。

起床の時間は四時だ。
夜明けまでには遠いけども
兎に角、四時には起きる。
毎日三時間の睡眠であるが、
佐吉は所謂「タイトスリーパー」の訓練をしたので、
これだけで十分なのだ。

あの怠け者の福島市松ずれなどは、
「十時間は寝ないと羽毛の艶が落ちるぜ~!」
などと云っていたが、
今頃はダラダラとだらしなく寝ている事だろう。
もしかして、涎を垂らしてイビキでもかいてるかも知れない。
そもそも、ヤツの汗臭い羽毛には艶などありはしないだろう。
あっても脂汗のてかりに違いない。
ことによれば、
洟みずをぬぐったあとかも知れない。

不潔なヤツだ。 


……ふん。





などと考えているうちに
佐吉は入眠し、
そしてすぐに目覚めた。

タイトスリーパーは夢を見ないので
(見ているが睡眠が深すぎて覚えていない)
睡眠はあっという間に過ぎ去る。
佐吉は、仏蘭西語の書物(アナトール・フランス)を開いて
珈琲をすすった。

さて、これまで三話、
尾張三羽雀の夢を連続して綴ってきたが、
佐吉の夢の話は、特に抑揚や山場などもなく、
これで終わりである。
そもそも夢を見ないのだから仕方がない。

佐吉の日常は常に、こう、散文的なのであるが、
まぁ、如才なく全てを無難にこなす秀才の生活とは、
案外とこんなものかも知れない。





23DEC14 SUZUME 011S



いつも読んで下さっている皆様、有難う御座います。

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