淳五郎、朱に染まった米を見る


雀の世界にもいろいろなドラマがある。
彼らもまた、
人間と同じように悩み、喜び、毎日を懸命に生きているのだ。

今回は、ある若雀の当直の姿をのぞいてみよう。




淳五郎、朱に染まった米を見る

淳五郎は雀の国の警衛兵士である。
そして今夜、彼は当直勤務についている。
軍である以上、この辺りは人間世界のシステムと同じで、
雀の兵士にも、当直はあるのだ。

この日の淳五郎の勤務は明朝0800時までだ。
それまでは、鋼の精神力で緊張を保たなければならないのだが、
彼は正直なところ、眠気に負けてしまいそうだった。
当直が辛いのは、雀も人間も一緒であるらしい。

「飯にするかの!」
淳五郎は食事をとることにした。
腹が減った時は、食事が一番で、
これによって眠気を追い払えるし、
エネルギーの補給にもなる。

さて……
『お腹が膨れたら眠気に拍車がかかるのではないか?』
そう思われる方もいらっしゃるだろう。
然し、実はそうでもない。
長い当直の夜は刺激が少なく
その中での食事は一大イベントなので、
気分の切り替えが出来て
意外と良い目覚ましになるのだ。
淳五郎は弁当の包みを開いた。

いつもの真っ白な
お米の弁当を前に、
淳五郎はごくりと唾を飲み込んだ。
兵士は身体が資本なので、
このように贅沢な食事が支給される。
米の一粒ひとつぶを噛みしめた時の
甘い味を想像しながら、
ふとお弁当を見た時、
彼は何か違和感を感じた。

真っ白なお米粒の平原の中に、
一つだけ真っ赤な粒がある。
それはまるで、
真っ白な壁に刺した画鋲のように目立っていて、
確かな存在感で淳五郎の目をとらえた。

「なんぞ、こりゃ!」
淳五郎は、思わず目を反らした。

そして彼がもう一度、恐る恐るに視線をお弁当に戻した時、
なんと、今度は赤い米が百粒ほどになっていた。
増えている。

淳五郎は驚き、咄嗟に目を反らして
そして再びお弁当を見ると、
なんと今度は全体のお米の半分ほどが
真っ赤になったいた。
淳五郎は、小さく悲鳴をあげて
お弁当箱のふたを閉じようとしたが、
あまりに慌てていたので手を滑らせて
お弁当箱をひっくり返し、
お米をそこらじゅうにばらまいてしまった。

辺りに散らばったお米は、全て真っ赤だった。
まるで血液の飛沫痕のように見える。
淳五郎は叫びながら立ちあがって
とにかく一目散に駆けだした。




……う、うぅん。。

なんという不覚。
淳五郎は机に突っ伏して居眠りをしていた。

然し、この真っ赤な米の夢はあまりにも現実的であったので、
淳五郎はこれ以降、もう二度と、
夜中に米の飯を食べることは出来なくなった。
いつか戦地で食べた血まみれの米の記憶は、
何年たっても若い兵士を苦しめ続ける。








さて、普通ならここでノイローゼになってしまうところだが、
どっこい淳五郎は兵士である。
先にも書いたが、兵士の資本は身体である。
身体は食事で保たねばならない。
淳五郎は、
『パンがなければケーキを食べろ』理論で、
当直の時は麦飯を持参する事にした。
そして、麦食はかえって彼を健康にした。



24JAN15 birds 002J5


いつも読んで下さっている皆様、有難う御座います。
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