福島市松、名を連呼される


雀の世界にもいろいろなドラマがある。
彼らもまた、
人間と同じように悩み、喜び、毎日を懸命に生きているのだ。

今回は、最早常連となりつつある市松雀の
ある日常をお話する。





福島市松、名を連呼される

福島市松は、雀拳闘の名手である。
彼の率いる大学チームは
先の尾張大会では優勝を果たしたし、
その腕っぷしの強さは天下に響いている。

然し、市松はただの運動馬鹿ではない。
実は学問に於いても
「今張良」と称されるほどの天才なのである。

さて、今日も市松の家には沢山の学者や書生が訪れており、
彼に教えを乞うている。

「市松さん、ニーチェの永劫回帰について、これこれ云々…」
「先生、静止トランスファ軌道に軌道変更する際に…」
「バルビゾン派が明治日本へ及ぼした影響についてですが…」

「そもさん!」
などと、禅問答を仕掛けてくる者までいる。

ポアンカレ予想、ミランコビッチサイクル、ロシュ限界……
難解な用語が飛び交い、
ありとあらゆる分野の質問が、市松に投げかけられる。

市松は珈琲片手に
全ての質問に軽快に答えてゆきながら、
「なかなか見込みのある者たちじゃ、己らは!」
と、満足そうに深く頷いて、集まった雀たちを見渡した。

質問会もひとしきりに落ち着いた中、
唐から来た二羽の雀のうちの一羽が、
立てかけてあった楽器の蓮華と孔雀の模様を見て、
「捨身惜花思」と、思惑深げに云った。
それに対してもう一羽の唐雀が、
「打不立有鳥」と答えたのであるが、
さて、これはどういった意味であるのか、と、
集まっていた雀たちは、熱心な討論を始めた。

あぁではない、こうではない。
いや、きっとこうだ。
何を言う、こうに相違ない!
いやいや、それは見当違いだ、云々云々・・・

皆が混乱を極め、議論も白熱してきたその時、
市松は颯爽と立ち上がって、
持っていた扇にの裏に、さらさらと何事か書き流し、
興奮している雀たちの中へ投げ入れた。
その市松の遣わした歌が、以下である。

身を捨てて花を惜しやと思ふらむ打てども立たぬ鳥もありけり


・・・・・・・・・・・・・・・・

一瞬、場は水を打ったように静まりかえり、
その直後に怒涛のような歓喜の叫び声が
天を突いて湧き上った。

「おぉ! 流石は市松先生!」
落雷の様な感激に打たれ、感極まった雀たちは、
翼を羽ばたかせながら一斉に市松の名を叫んだ。
「市松様! 市松様! 市松様ァァ!」
「市松様! 万歳!」
「感動しました、市松先生!」
皆の叫びは段々と一つにまとまって
大合唱となってゆく。

いーち、まつ! いーち、まつ!
いーち、まつ! いーち、まつ!


今や、彼の教養を讃える雀たちの声は、
天地を割らんばかりだ。

いーち、まつ! いーち、まつ!
いーち、まつ! いーち、まつ!


いーち、まつ! いーち、まつ!
いーち、まつ! いーち、まつ!

いーち、まつ! いーち、まつ!
いーち、まつ! いーち……












「ふぅぅぅ… なかなか気分ええ夢じゃったのぉ。」

市松は目覚めた。
さて、今日も学校だ。







01JAN15 MIJOU 002FI



いつも読んで下さっている皆様、有難う御座います。

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