源太左衛門、ジョージ氏と語らう


雀の世界にもいろいろなドラマがある。
彼らもまた、
人間と同じように悩み、喜び、毎日を懸命に生きているのだ。

今回は、ある外国雀のお話を紹介してみる。





夕焼けに染まる港を見下ろす公園のこの大銀杏に、
いま、雄の雀が二羽、翼を休めている。
落ち着いた雰囲気の大人の雀と
エネルギイに満ちた目をした若い雀だ。

大人の雀は名をジョージ氏という。
遥か海の向うの桑港(San Francisco)という都市から
十年程前に、この島国に来た。
若雀の名は、源太左衛門。
まだ見ぬ異国の地に憧れており、
いつか刀一本背負って
この国を飛び出したいと考えている。

「私はいつか、桑港に渡りたいと考えております。」
「それはいい。 若いうちに世界を見てまわりなさい。」

ジョージ氏は、遠くを見るように目を細めた。
日本種に比べて濃い茶色の羽毛に包まれた横顔が、
美しく夕陽に染まって朱に滲んでいる。
いつもの変わらぬ穏やかな表情ではあるが、
その瞳の深淵に、微かな、
煌々と輝く月にかかった
ほんの微かな薄雲のように微かな、
一瞬の悲しみの影がよぎったのを、源太は見逃さなかった。

(故郷が恋しいに違いない)
源太はそう考えた。
「ジョージさんは、桑港にお帰りにはならないのですか?」

ジョージ氏は、いつもよりも、より一層、
柔和で人懐っこい笑顔を見せながら、
ゆっくりした口調でこう答えた。
「私はこの国に骨を埋めるつもりだよ。」

「何故です? 故郷が恋しくはないのですか?」
ジョージ氏の意外な言葉に、
源太は驚いてしまった。
「だって、そんなに寂しそうなお顔ではありませんか。」

「私はこの国を愛しているんだ。」
ジョージ氏は、博愛を信条とする基督教徒らしい
慈愛に満ちた暖かい目で、
まだまだ人生の年輪を重ねていないであろう
若い源太左衛門を見つめた。

それからゆっくりと視線を落とし、
その先にある外人墓地を見つめながら、こう続けた。

「愛する息子が眠るこの国を愛しているんだよ……。」








01JAN15 MIJOU 003a




いつも読んで下さっている皆様、有難う御座います。

*今回のお話は、一部、作者の実体験を元に構成しています。



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