升、試験にて勘違いをする


雀の世界にもいろいろなドラマがある。
彼らもまた、
人間と同じように悩み、喜び、毎日を懸命に生きているのだ。

今回は、弥助雀が雀の学校であった
こんな話を聞かせてくれた。





升、試験にて勘違いをする

正岡升(のぼる)は幼鳥の頃から学問に打ち込んできた。
大原観山という有名な漢学者を祖父に持ち、
物心ついた頃から四書五経など古典の素読を日課とするなど、
その学問の基礎は地下深淵の岩盤の如く堅固なものであり、
畢竟、それを礎石として築かれる学問もまた、
揺るぎなく堂々と、天をも目指す勢いで華々しく発展した。
(……ただ一つ、英語を除いては)

升は英語が苦手であった。
どうにもあれは、いけなかった。
何しろあの線の細い軟弱な羅馬字なる文字がいけない。
アルフアベトオなどと呼ぶらしいが、
舌を噛みそうな発音は、それだけで厄介だ。
今、升の目の前にあるこの試験用紙も、
正直言って、何が書いてあるのか半分以上はわからない。
併しこの試験で一定の得点をあげなければ、
落第の憂き目を見る事となってしまう。
何としても、この試験は突破しなければならない。
その他の科目は寝ていたってパスできる。
「パス」という英語を使う事により、
自分は英語が得意なのだ、と暗示をかけてみたが、
それだけでは答案用紙は埋まらない。

さて、なんとか設問をクリアしつつあるが、
目下、「judiciary」なる単語の意味がわからない。
後半の長文読解などの難解な問題群にゆく前に、
なんとしても前半の肩慣らし問題的な部分で得点を稼いでおきたい。
ここは一つ、同輩に武士の情けを求める事にした。

升の左の席には、福島市松という生徒が座っている。
市松はさっきから、腕を組んで微動だにしない。
岩石のように動かない。
魂が抜けているようにも見受けられる。
市松からの支援は期待出来ない。

右の席には加藤虎之助という気の優しい男だ。
彼は地道な勉強家でもある、力になってくれそうだ。


虎、虎・・・!

・・・なんじゃ?

「judiciary」ちゅうんは、なんちゅう意味じゃったかの・・・?

・・・はん?

「judiciary」じゃがな、「judiciary」・・・

「ほうかん」・・・

「幇間」・・・??

そう、「法官」じゃ・・・

おぉ、すまんの! サンキューじゃ、虎・・・!



幇間、幇間・・・・・・
なんぞ英語にも
幇間(宴会などの太鼓持ち)なんちゅう言葉があるんじゃのう、はっはっ!

升は自信たっぷりに、「judiciary = 幇間」と力を込めて書き込んだ。




さて、升のこの解答が間違っていたのは、わざわざ言うまでもないのだが、
まぁなんとか、本人の思っていたほど結果は悪くなく、
及第点に届く事は出来た。
ほっと一安心の升であったけども……

「ほうかん違い」の件では、後で、
虎之助から大いに笑われてしまったという今回のお話。




20NOV14 026TN14







いつも読んで下さっている皆様、有難う存じます。


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