雀の娘たち、願掛けの旅に飛び立つ


雀の世界にもいろいろなドラマがある。
彼らもまた、
人間と同じように悩み、喜び、毎日を懸命に生きているのだ。

今回は、我が家に飛来する弥助雀から聞いた
こんなお話を紹介する。


2014-10-04 002Yasuke








雀の娘たち、願掛けの旅に飛び立つ

一丈青扈三娘は勝気でお転婆な娘雀だ。
凛々しいその姿に相応しい
非常に高い武術の技量を持つ。
その武は男子雀にも決して引けをとらなく、
凛とした氷のような美貌が
彼女の魅力をより一層高めている。
一丈青というのは、
勇壮な彼女に敬意を以てつけられた綽名である。

那須妙子は、上品な外見をもった
美しい少女雀だ。
その為、この雀の周りには常に男子雀が群がっているが、
それら取り巻きは、いつも扈三娘に追っ払われている。
扈三娘とは姉妹のように仲良しで、
おっとりタイプの妙子にとって
扈三娘の存在は頼もしい。
ロシア雀の生まれ変わりという噂も。

小弓は、この仲良しグループの中では最も年長の
落ち着いた雰囲気のご婦人雀だ。
扈三娘と那須妙子をいつも優しく見守る
優しい姉のような雀だが、
怒らせると悪鬼の如く恐ろしい存在となる。
着物の着付けのように丁寧な性格をしており、
振袖のように揃えた羽が
たいへんに美しい典雅な雀である。
和風美鳥という言葉が相応しい。

さてこの三羽であるが、
ある時、願掛けの儀式を行うことになった。
言いだしっぺは扈三娘である。
男勝りとはいえ、その心根は乙女であるのかと思いきや、
その願いは「武の頂を極めたい」という乱暴なもので
これにはいささか落胆したが、
思えば実に彼女らしい。

那須妙子の願いは、「優しい男子雀に出会いたい」という、
極めて自然な女子の持つ微笑ましい願いであった。
優しいという一言だけで、何の具体的な影像も結ばぬ
甚だ漠然とした内容であるところが初々しい。
彼女はまだ、純粋な夢見る乙女なのだ。
扈三娘に、こういった女性的要素が皆無であることは明白だが、
それを口にするのは身の安全の為に憚れる。

小弓はというと、彼女には特に願い事などはなかった。
願掛けという行為はやや子供っぽく感じられたが、
二羽が無邪気にはしゃぐ姿を見ていると
一緒にその儀式を楽しみたくなった。
小弓にとって願掛けそのものは重要でなく、
仲良しの二羽と一緒に何かをすることが大事なのだ。
併し、名目上何か願い事を作らねばならぬ。
小弓は、来週行われる予定の、
京雀との合同お茶会の成功を願い事とした。

この三羽が、これから願掛けの儀式を行う。
無事に成し遂げた者の願い事は
必ず叶うとされているが、成功には幾多の困難が予想される。
ただで叶う願いなどないし、あっても有難味に欠けるというものだ、
この試練はまさに願ったりなのである。

さてその儀式の方法である。
これは必ず、晩秋の夕方に成し遂げられねばならない。
丹沢奥地にある弁照儀碓という深紅の大木から
まず坤の方角へ飛び、支利臼という蒼い若木を探す。
そこから乾の方角へ進み、武魯嬉音という薄黄色の木を経て……
といった具合に、全部で七つの天木を巡るのだ。
それぞれの木の天辺で、願い事を祈願し、
最期の妙見菩薩という不動木での祈願を以て、
この「橋づくし」と呼ばれる儀式は終了する。
「橋」は、言う間でもなく「願いを渡す橋」の意味である。

これだけなら、なんとかなりそうにも思えるが、
実は、儀式の間は、一言も声を発してはならないという極まりがあり、
これが破られた時点でその者は脱落となる。
脱落した者との目を合わせるなどのあらゆる接触は、
更にその者をも脱落させる。
試練は多く厳しいほうが、願い事の完成度をより高めるものだ。
願ったりである。

さて、この雀の娘たちは、
果たして儀式をやり通す事が出来るのか?




この話の顛末は、
おって弥助雀が教えてくれることになっているので
いずれ皆様にも報告出来ると思うが、
本日のところはここまである。
これからというところで話が中断するのは
非常に心苦しいが、どうか許していただきたい。

あの三羽のことなので
上手くはいくと思われるが、
さて。……








願掛けの旅に出立前の腹ごしらえ。。
手前から、一丈青扈三娘、那須妙子そして小弓雀の姿を見る。
願掛けの顛末については、またいつか……


11NOV14 SZM 008a

いつも読んでくださっている皆様、有難う御座います。




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