雀は多種多様に囀る


雀のさえずり方は、一般に「チュンチュン」とされているが、
それは誤解である。
雀はチュンチュンとは決して鳴かない。
人の喋り方が個性的であるように、
彼らもまた、一羽一羽の個性を反映した鳴き方
(喋り方と言ってもよい)をするものだ。

我が家のウッドデッキに飛来する雀たちを観察した。
このところずっとだ。
最早、可愛くてならぬ程に愛着がある。

ボス格の雀には熊坂長範と名付けた。
この雀はチュンチュンなどとは間違っても鳴かぬ。
地面の底が低く唸るような声で、
ヴィ、ヴィヴィ、と鳴く。
ヴィ、ヴィ、ヴィ、ヴィ、ヴィィィィ。
この声がすると、その場にいる全員が一歩、引く。
実に威厳のある声であり、とても雀とは思えない。
ウォーターシップダウンのボス兎を彷彿させる勢いだ。
熊坂長範の歩く先は、
雀たちがさっと身を引き
モーゼが海を割ったように見事な道が出来上がる。
その直線道を歩く熊坂の姿は、
最早小鳥とは思えぬほどに堂々としている。

熊坂長範に付き従うのは、若い弥助だ。
弥助は常に何事かを囀っている。
キュイキュイ、チュピチュピチュピチュピ、
チチ、チチ、チチチチ……ピーピヨ。
といった具合だ。
こいつについてもそうだ。
チュンチュンなどと、のどかな鳴き方はしない。
弥助は常に何か、軽やかな音調で囀っており
これは雀コミュニティーの明るいBGMのような役割を
果たしているものと思われる。
所謂、盛り上げ役というやつだ、幇間とも言えるが、
それは甚だ弥助に失礼かも知れない。
因みに弥助とは本名ではないらしく、
出身は遠い西国らしいのだが詳しいことはわからない。

女性もいる。
彼女の名は、望月千代女という。
ピユピユ、ピユ、ピユピユ、ピユ、
と、静かに透き通る声で鳴く。
調子のいい時は、
ピユピユピユピユ、ぴゅぴゅぴゅ、ピピピ、チチ、チチチ、
と、ずっと何事か囀っているが、普段は無口なほうといえる。
落ち着いた風貌のこの婦人の眼は
何処か悲しい過去の存在を思わせる。
お江という友人がいるらしい。

溌剌と爽やかで健康的な美男子は、
人気者のチュン吉さんだ。
チュン吉さんはいつも元気で、
特徴的な顔の白い斑点は
その男前っぷりに一層の個性と輝きを与えている。
兎に角元気で、きっかけもないのに
いきなり走りだしたり飛びあがったりするヤンチャ坊主だ。
チュン吉さんは、
チョピ、チョピ、チチチチチ!? ピピピピピ、
ポッキュン、ポッキュン、と囀る。

チュン吉さんの双子の妹、チュラドンちゃんは、
ちょぴりお転婆な食いしん坊だ。
食べ物を前にすると、
チチー、チーチー! チチチチチ!
と、お祭り騒ぎになる。
歌や笛など、何かに呼応しての鳴き方は大変に可愛らしいもので、
ちゅぅぅん、ちゅぅぅん、と、女の子らしい囀りだ。
チュン吉さんと二羽で、「雀の双子星」と呼ばれている。

かつて、熊谷直実という大柄でワイルドな雀がいた。
如何にも豪傑といった風貌である壮年のこの雀は、
熊坂と共に慕われる存在であった。
熊坂が梁山泊に於ける晁蓋なら、
この熊谷直実は
及時雨宋江といった立ち位置であった。
併しである。
この真面目で実直な心優しき荒武者は、
ある出来事がきっかけで出家してしまった。
今は、斉の銀雀山で修行しているという話だ。
この出家にまつわる話については、
いずれ別に場を設けて語らねばならぬ。
彼は、チュチュチュチュ!チュチュチュチュ!と、
豪快に囀る。
HAHAHAHA!と高笑いする花和尚に似ている。

ルードヴィッヒ・フォン・クリスタルウマント・
ソンゲルカナ・ウンゲルカナ。
知る人ぞ知るこの名を持った彼は
西洋雀の貴族であるが、
ある目的を以て日本にやって来た。
同じ異国雀の誼で弥助とは
特に仲がよい。
皆からは、ルーと呼ばれている。
母国語が異なる関係もあって、
その囀り方は独特だ。
アクセントの置き方と、特徴的な間延びにより、
彼の囀りには若干コミカルなものが感じられる。
Chu~、Chuchuchu~、Chu~、Chuchuchuchu、
といった具合だが、文字にするとよくわからない。



人の世界に「十人十色」という言葉があるが、
これは雀の世界にも当てはまる。
庭に飛来する雀たちを眺めていると、
その多種多様な、一羽一羽の持つ個性的な囀り、振舞いに、
しばしば驚かされる。
見れば見るほど彼らは社会的であり文化的であり
個性的であるのだ。

彼らを単なる鳥ではなく、「個」或いは「友」として認め、
尊敬の念をもって、(一方的ではあるが)付き合いをしてゆくうちに、
そこには自然と詩が生まれて画が出来た。
それが今回の物語である。

この世界を構成するものは、山川草木、あらゆる生命である。
どんな小さな生命にも、それぞれの事情があり使命があり、
また運命があって、その中で力強く生きている。

雀だって例外ではない。

彼らもまた、一人一人がいろんな背景を持って
過去の積み重ねのうえに今を生きているのだ。

今回の、雀たちの身の上話は、
確かに私の妄想の上に出来上がったものかも知れない。
が、併し、全くの嘘とは言えない。
何故なら、人間一人一人の人生にドラマがあり劇的であるように、
雀たちの人生にだって、そういったものが多々あるはずだからだ。
人、鳥に関わらず、生きていればいろんな事がある。
平凡な人生などどこにもない。




さて、少しばかり、力が入りすぎたようだ。
この辺りでお茶にしよう。









2014-10-04 002CK



スポンサーサイト

| はなそらDAYz!ホーム |

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURL:
http://hanasora0526.blog72.fc2.com/tb.php/1594-b868541f
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザーのみ)