老葉のこころ (後編)


老葉のこころ (後編)

前篇はこちらから。。



濃い緑の新芽は、日毎にどんどんと伸びていった。
新聞を丸めたような形の新芽は
雨の後の筍のような勢いで
ぐんぐんと成長し、伸び、育ち、
今やその葉を太陽に向かって大きく広げようとしている。

そんな時、黄忠に変化が表れ始めた。
瓶挿しにしていた頃の数ヶ月間、
微塵の衰えも見せなかった三枚の葉たちが、
段々と色を落とし、皺々に萎れ始めたのだ。



私は先ず、自らの不手際を疑った。
鉢に植える手法が間違っていたのではないか?
重大な手落ちでもあったのではないのか?
併し不安を感じたのは、ほんの一瞬であった。

何故なら、伸びてきた新芽は、
依然として、否、一層の輝きを以て、力強く存在していたからだ。
新芽に衰弱は全く見られない。



こうして今、古い葉たちは次第に衰え、萎れてきてしまった。
しかし新しい葉は更なる成長を見せ、
今や古い葉たちのサイズにせまる勢いだ。

ここで私はようやく気付いた。
この小さな植物は何か月もの間、
ただ意味もなく生きていたのではなかった。
この新芽を芽吹かせる為に、懸命に生きていたのだ。
新しい命の誕生の為に、
水だけの瓶の中で、必死に命を長らえていたのだ。



今、年老いた葉たちは新芽の成長を目の当たりにし、
安心して肩の力を抜くことが出来た。

ずっと緊張していた精神が緩んだ事により、
長年の疲労や心苦が今、
雪崩の如き勢いを以て、老葉たちの骨身に襲い掛かり、
遂に彼らは力尽きたのだ。

しかしこれは、衰えでもなければ、終わりでもない。
若い新芽を立派に世に生み出した、
未来を繫いだ老葉たちの大いなる勝利であるのだ。
彼らはその役目を見事に果たしたのだ。



今、こうして日に日に萎れてゆく老葉たちの傍で、
若い芽が生き生きと輝いている。
もうじきその葉は、大きく広がるだろう。
その時には、老葉たちは最早、その緑を保ってはいられない。

併しきっと、老葉たちは安らかな満足感にみたされて、
違う世界に旅立ってゆくこととなる。
そして、新芽は、老葉のことを一生忘れはしないのだ。







間もなく季節は冬となる。
冷たい灰色と草木の枯れた薄茶色に世界が支配されてゆくなか、
私の家には一つの健康な緑色が誕生し、
健やかに成長を続けている。




重大な責任を果たした老三枚葉に対し、敬礼!

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~ 追記 ~

2014年10月10日、1630時、この記事を掲載したまさに今日先程、
ふと黄忠の老葉たちに目をやると、
一番手前の黒く変色した葉が、
ついに力尽きて茎から落ちていた。

このタイミングでの落葉である。
特に記録しておかねばなるまい。









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