老葉のこころ (前篇)


老葉のこころ (前篇)




昨年の秋より
ずっと花瓶挿しにしていた小さな植物があった。

頂いた花束を構成していた
数ある植物のうちの一つであるが、
日一日枯れてゆく花たちの中で
唯一元気だったものを
花瓶に挿しておいたものだ。

その状態で、植物は冬を越し、春を迎え、
健康な緑のままで初夏となった。



特に栄養剤などを与えていたわけではない。
ただ毎日、水を変えていただけだ。
併し、三枚の立派な葉をたくわえたその植物は、
枯れたり萎れたりすることなく
その健康を保ち続け、
力強い葉の表面の「張り」には、衰弱の兆しすら見られなかった。

植物はまるで造り物のように
数ヶ月に渡り何の変化も見せなかったが、
ある夏の日のこと、
突如として、切り口から白い根が生え始めた。

造花の可能性を考えたほどに変化のなかったその身体に、
ついに変化が現れたのだ。
それも、陽性の変化だ。
私は驚き、声をあげた。



それからは、液体の栄養剤を与えて、
しっかりと世話をするようになった。
透明な瓶の中で根が伸びてゆく様子を楽しんだ。
葉に黄色の斑点がある事、
萎れもせず増々勢いを見せるその様から、
黄忠」と名付けた。

根が小さな瓶の中いっぱいになった時、
黄忠を鉢へ植えようと考えた。
劇的な環境の変化に黄忠が耐えられるかはわからなかったが、
とにかくやることにした。 
根が瓶の中いっぱいになったこの状態では、
とてもではないが窮屈だ。

栄養のある土で鉢を満たし、
根がしっかりと張るように
細心の注意を以て黄忠を鉢植えにした。
「老黄忠」に新しい環境が出来た。
老黄忠:
年老いて増々壮健な方を、蜀の黄忠に因み敬意を以てこう呼ぶ。




黄忠は、その鉢を気にいったかのように、
しっかりと根付いてくれた。
心なしか、彼の身体全体を包む雰囲気が
一層力強くなったようにも見える。
すぐにもこの鉢のサイズを超えてしまいそうだ。

やはり、土に植えて良かったと思っていた丁度その時期、
なんと、黄忠の先端から小さな新芽が芽吹き始めた。

(「老葉のこころ」後編に続く)




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