誇り高き死


22AUG14 FJ 036 a


この蟹は今、
叩き付ける怒涛に立ち向かおうとしている。

蟹に勝ち目はないであろう。
しかし、これほどの無謀な勝負を挑んでいる以上、
そこにはそれなりの理由があるはずだ。
蟹が死を決意するほどの何かが。





ここで画面中央下付近をよく見て欲しい。
蟹がもう一匹いることにお気付きだろう。
この蹲ったもう一匹の蟹こそ、
岩の上に凛々しく立った雄の蟹の妻なのである。

妻は今、負傷した脚の激痛の為
その場から一歩も動くことが出来ない。
其処へ、満潮に伴う大波が次々と押し寄せている。
最早避難する時間などない。

そうなのだ。 
岩の上の雄蟹は
荒れ狂う怒涛から妻を守ろうとしているのだ。

動けぬ妻を案じ、
蟹は海を押し返そうと考えた。
無論そんな事は不可能ではあるが、
悲しいかなこの小さな生物にそんな事は判らない。
ただただ必死なだけなのだ。

勇敢なる蟹は決意した。

(この身体を砕かれてもきっと海を押し返してみせる)





間もなくこの妻と夫は
無情の波にのまれるだろう。
そしてその事は世界の誰にも知られることはない。

しかし、この広大な世界の片隅で今日この時、
このように美しく、気高く、愛に満ちた物語が確かに存在したのだ。

その厳然たる事実は私の心に強い感動を呼び起こし、
どうしても書き残しておかずにはいられない心境に至った次第。

















この物語は、太宰治の「一つの約束」の如く、私の幻想に端を発したものである。
然し決して嘘や創作とは言い切れない。
何故なら、世の中には誰にも知られない事実というものが確実に存在するからだ。

そうして、そのような、小さいけれども懸命に生きる、戦う命の物語にこそ、
なんの濁りもない透明な美が輝くものだと、私は考える。


22AUG14 FJ 036 aHS

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