
(天の川の西の岸に小さな二つの星が見えます。
あれは、
花ちゃん童子とぽっくん童子という
双子のお星さまの住んでいる小さな水精のお宮です。
夜は二人ともきちんとお宮に座り、
一晩、天空の回転に合わせて星めぐりの歌をうたいます。
それがこの双子のお星様の役目でした。)
花ちゃん童子とぽっくん童子が
丹沢のお山を
お散歩しておりましたところ
目には見えない
「不思議な石の像」
に出会いました。

この像はこの世界にあって
そこに
(無きもの)
天空のお星さまである
童子たちだからこそ
<見て、話すことが出来る・・・>
そんな存在でした。

石の少女が申しました。
「私はこの地に
とりのこされて、
眠ることさえ出来ません。
何百、何千と
凍える冬に絶え
ずっとずっとここにいる者。」
石の子犬が申しました。
「僕はこの子と
ずうっとこうして
一緒におります。
氷雨が降っても、雪が降っても、
ずうっとずうっとおるのです。
そうして
気の遠くなるような時がたち
僕たちはいつか
石になってしまいました。」
寒風の中、
石の少女はうたいました。

石の子犬はじっと
少女のうたを聞いておりました。

<少女のうた> と <子犬の想い>
それが
繰り返されるたびに
真っ黒な木に

冷たく堅い
氷のような果実がなってゆきました。

一つ数えて家族を想い
二つ数えて夢に泣き
三つ数えて空のむこう
ただここにいよう
石となり朽ち果てたって
かまいはしない
この黒い木になる
たくさんのかたまり
(その数だけ)
二人は
(祈って)
きたのでしょう。

涙や悲しみや
それらすべてが結晶となった
この堅い果実を目の前にし
花ちゃん童子とぽっくん童子が
二人を想い
強く想ったその心が
いつしか歌となって・・・
険峻極める丹沢の山々に
静かに
そして暖かく
響き渡っていました。。

悲しい果実
いつかぬくもり
暖かな腕に抱かれて眠れ

冷たい果実
いつかやすらぎ
安心の夢に包まれ休め

そうして気づけ
あなたはそこで
一人で凍えてたのではない

そうして気づけ
氷の身体に
寄り添い護りとなった命に
童子たちのうた声に包まれ
冷たく堅かった
「数え切れないほどの果実」は
いつしか
温かな安らぎの涙とともに
熟れて
静かに地上へと落ちてゆきました。

その時、
二人の童子は空を見上げて
確かに見たのでした。
女の子と子犬が
ゆっくりと
解放された微笑みに満ちながら
神さまの待つ天国へと昇ってゆく
その
幸福に満ちた姿を。。

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