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気配


花とそらが亡くなってからの後、
暫くの間、確かにあの子たちの気配を感じていた。
それは明らかな現実的気配で、
決して錯覚や勘違いとは異なる確かな何か。
生活のなかの当たり前の感覚を
当然の如くに感じていたのだ。

トットットット、と、こまかい小走りで
誰かがリビングに入ってくる。
おや?と振り向いても誰もいない。
今の歩調はそらか? 
どさっ、と誰かがマットに寝転ぶ。
続いて、ふ~っと吐く息。
花かな?
こういったことが頻繁だった。

しかし、魂にも滞在の期間があると見えて
こういったことは段々となくなってゆき、
今ではもうほとんど・・・ 
しかも、薄っすらとしか感じなくなってしまった。

成仏という言葉がある。
亡くなった者が遺された者を見守り続け、
もう大丈夫だろう、と判断したら天に帰ってゆく。
これを成仏と私は考える。
気配が消えてゆくのはこの為だ。

しかし時々、
私たちの様子を見にやってきてくれる。

こっそり。

こっそりと。


読んでくださった方、ありがとうございます。
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報道を見て


前回書いた
遊歩道にゴミを捨てる者とそれを掃除する人。
人の世の常ともいえるこのコントラスト、
規模は違うが本質は同じ光景を
先日ニュースで目にした。

テキサス州エルパソで
アクティブシューター(乱射事件)発生。
たまたまその場に居合わせただけの方たち、
数十名が犠牲となり、多数が負傷された。

米国のニュース番組を見ること数時間、
日本のニュースにはない速報と詳細を追うことが出来た。
発生から約十時間後、市のある施設に
長い行列が出来ていることを報道は伝える。

献血センターに市民が押し寄せている。
長い行列は少しでも被害者の役に立ちたいと願う
ボランティアの血液提供者たちだ。
暑いなかで数時間の待ち時間となるので、
列の周囲にこれまたボランティアで
飲み物や食べ物を無料で配る人たちがいる。

これがエルパソなんだ!
この善意の人々こそがエルパソなんだ!

マイクに向かって
市の関係者が半ば叫ぶように訴えていた姿が
実に印象的だった。




読んでくださった方、ありがとうございます。


8月このエルパソでの事件の時点で、
「2019年度」の合衆国に於けるMass shooting(乱射事件)は249件という。
(この直後のオハイオでの乱射事件で250件目)
こんな狂気が日常となっている事実自体を狂気ととらえなければならないが、
最早皆が麻痺している印象だ。





遊歩道


私の住む住宅地の中心を貫いて
一本の遊歩道がはしっている。

近くの城跡の公園から市のスポーツ施設を繋ぐこの道は
しっかりと整備管理されて
常に清潔な様相を保っている訳だが、
そこには、多くの方の影の献身がある。

私の出勤時間は早い。
人も車もまばらな時間から
この遊歩道を通って職場に向かう。
ある朝、
いつもと変わらない道を進みながら、
ハッとする光景に出くわした。

大量のゴミが放置されている。

夜のうちに数人で飲み食いし、
そのままにしたものと見える。
なるほど、夏休みか。
美しい街並みにかかれた
スプレー缶の落書きを見た時のような
嫌な気分に朝からうんざりした。

帰宅時、辺りはすっかり夜で
進む先には街灯の明かりが
点々と散らばる小島の群れのようだ。
本来美しいこの遊歩道だが、
朝のゴミを思い出して
現地に接近するにつれ気が沈んでゆく。

ゴミがない。
跡形もない。

遊歩道は再びその清潔な姿を取り戻し
微かに涼やかな風が何事もなかったかのように
吹き抜けてゆくのみだ。

かつて目撃したある光景を思い出した。
あの早朝、一人で黙々とゴミを片付けていたご年配の紳士。
ゴミを捨てる者もいれば、それを片付ける人もいる。
あの当時、
散乱するゴミがいつの間にかなくなっていることを
深く考えもしなかった。
然し、ゴミが独りでに消滅することなどあり得ない。
誰かが片付けているのだ。

この事実を再認識し、
私は、心のなかで深く合掌したのでした。





読んでくださった方、ありがとうございます。

新九郎、真っ赤な薔薇にしどろもどろする


(前回までのあらすじ)
お世話になった方の退職に際し、
花束を贈ろうと画策した我らが新九郎君。
花屋さんが満面の笑顔で渡してくれた
その一束は。…


花束作成には時間を要するので
その間に昼食をすませてきた新九郎君。
驚きの花束と対面します。
なんと、男性にあげるのだと先に云っておいたのに、
出来上がったものは見事なほどに真っ赤で
燃えあがるような薔薇の花束。
いくら無粋な新九郎君でも、
赤い薔薇に
情熱的な愛だか何だかの意味があることくらいは知っています。
一大事です。

うっと後ずさりするその姿を敏感に捉え、
花屋さんが猛烈に畳みかけます。

「いいのよ、この花は~!
サムライっていう名前の品種なんだけどね、
ほら!見て、ここ!
咲き方が素敵でしょう~!
男の人が相手でも、いいのよ、
名前がサムライなんだから!
サムライよ、サムライ!
良かったわね~!」

新九郎君によるこの再現は
少々大げさという疑いを拭いきれませんが、
まぁ、こんなカンジで相手が男の人でも大丈夫、と、
複数回にわたって説明してくれたのだとか。
その根拠が、名前がサムライ、しかないのですが、
何しろ専門家が云うことですから間違いないはずです。
しかし新九郎君が
心から納得したわけではないのがわかります。

ともあれ、とにかく昼休みという時間制限もあるので
新九郎君は一路、Tさんの職場へ向かいました。
コンコン、とノックして挨拶をし、
はいと手渡す情熱的な赤い薔薇、サムライ。…

勿論、Tさんのリアクションは先ずビックリした様子で、
あれっ!?という表情に、
「こ、これ、新九郎君が買ってくれたんですか?」
と、微かに笑っているような困っているような
複雑な表情が先ず浮かび、それからすぐにハッとして
「いやありがとう! 綺麗ですね!ありがとう!」
礼を失しないように取り繕ってはくれたそうですが、
やはり若干の怪しい緊張が見られたとのこと。

新九郎君もなんだかもう、
必死に花屋さんの説明を再現して
「なにしろ名前がサムライですから大丈夫です!」
と、汗をかきかき釈明しますが、
どうにも困ってしまったとのことでした。

…と、まぁ、
こんな事は別れの一場面に於いては
些細なことでしかないので、
これ以外は思い出話で盛り上がったりと
気持ちの良い別れになったそうですが、
何しろおっちょこちょいな新九郎君らしい
愉快なエピソードでしたので紹介してみたという次第です。

今日も彼は私の生活にスパイスを添えてくれます。




読んでくださった方、ありがとうございます。

新九郎、知り合いの退職に際し花束を贈ろうと画策する


先日のこと。
新九郎君の知り合いの方が退職されたのだそうです。
どういった理由だか、転職先はどこなのか、
込み入った話は一切なしで、
お別れの際はただただ、
これまでの感謝の気持ちを伝えた、とのことで、
如何にも新九郎君らしいシンプルで熱い表現に
私はやっぱり頬を緩めてしまったのです。

さてこの方、仮にTさんとしましょう、
Tさんは新九郎君とは部署は違うのだけど、
何かあると必ず連携する関係なので
多くの専門知識を教えてくれた、とのことでした。
仕事内容の深化に只ならぬ貢献をくださった
所謂恩人といってもよいほどの方だそうで
新九郎君の語り口調から、
Tさんは、尋常でない御仁であったことがわかります。

そのTさんの退職です。
新九郎君は何とかこの感謝の気持ちを形で表したい、
などと、衝動にかられたいつも通りの行動様式で、
気が付いたら自転車を飛ばして
花屋さんへ急行していたとのことでした。
この辺りの鉄砲玉的な行動が実に新九郎君らしいのですが、
なんと今回は、
途中で止まって、退職に花束は適切であるか、などと
スマホで調べたとのことで、
この冷静な判断は私を大いに驚かせたのでした。

(今までなら、良かれと思ってしでかした何かが
周囲の失笑を買ってしまって、
そこではじめて調査を行って後に
漸く赤面してカッカする、というのが新九郎君ですから。…)

心の声が少しだけ漏れたかも知れませんが、
話を進めましょう。

こうして花屋さんに到着した新九郎君。
これこれこういう訳で、と、
事の背景を説明して花束を注文しました。
完成まで20分程度を要するとのことでしたので
その間に昼食を取り、
戻ってきた新九郎君が目にしたものは。…

ちょっと長くなってしまったので次回に続きます。




読んでくださった方、ありがとうございます。

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