風鈴に風が言葉を伝えてる


私が蜻蛉好きなのは、
武田家の重臣、板垣信方に由来する。

その思いが高じすぎ、
遂には蜻蛉の風鈴を買うまでに至ったのは、
子供っぽい私の性質であるので、
笑って乾杯のグラスを差し出して欲しいところであるが、
さて…

私はこの風鈴を室内に掛けている。
この季節になって
リビングの窓を開ける機会が多くなり、
畢竟、涼やかな春の夜風に
風鈴が鳴る機械が増えたのであるが、
その何気ない音色が、時折、
私の心に流れる様に滑り込んでくる。

他との違いが
はっとするほど明確に感ぜられる。
私はそれを
花とそらの語りかけだと信じている。

現世では最早、直接の交信の手段を失ったので、
自然の風に乗せ、風鈴を通し、
花とそらが静かに語りかけてくるのだ。

それは果たして気のせいであろうか、
願望であろうか、夢であろうか。
それとも、稚拙な感傷でしかないのか。

それらをやんわりと否定する
確固たる何かが私の中にはあり、
ふと、頬を緩めて花そらに話しかけてみる。

風が蕭々と吹き抜けるばかりの朧月夜。
信ずるところに現実が在る。







* タイトルは、何処かの俳句コンテストでの小学生の作品を本歌取りしたものです。


いつも読んでくださっている皆様、有難う御座います。






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現実を補完する


前回からの続きです)

はたして
あのペンダントにはどんな背景があったのか?
何にもないでは、
あんなに張り切っていた新九郎君が報われませんので、
ここはひとつ、何か考えてみましょう。



男女の名前や日付が刻印されているのですから
ただ事ではありません。
その日付はきっと大事な記念日でしょう。
結婚かも知れないし、出会いの日かも知れない。
いずれにせよ、形にしなければならない程の
重大な出来事があったはずなのです。
それが放置され、回収もされないとなると、
そこに何かの意味があるのかも知れない。
もしかしたら、背景には、
悲しい別れなどがあったのかも知れないのです。

仮にですが、
二人はこの地で出会い、そして結ばれた、としましょう。
併し、その直後に戦争が起こったとします。

sora scaredそら「初っ端から妄想爆発ゥゥッ!」


やがて男は
遥かロシアの地へ出征することとなり…

hana hatena花「いきなり訳がわからんのじゃが?」


仮にです、仮に。

で、
数年して戦争は終わり、女は男の帰りを待ちました。
ずっとずっと、待ち続けました。
併し遂に、男が帰ってくる事はなく
女は意を決して
軍当局へ、男の消息を尋ねに行きました。

sora mumuそら「はぅぅ・・・!」


女を待っていたのは非常な記録でした。
男の戦死を告げられ、女は絶望の涙を流しますが、
涙を拭いたその両目は強い決意に満ちていました。
「こんな事があるハズがない!
私にはわかる、彼は生きている!
私は彼を探しにゆく…!」


hana ordinary花「なんかどっかで聞いた話じゃがなwww」


男の生存を信じ、必ず再会するんだという女の執念は、
遂に男を探しだします。
ずっと想っていた、ずっと求めていた、
男の生存だけを信じて、ただそれだけを心の支えにして、
今までこうして生きてきたジョバンナの苦労、
それが遂に報われる、かと思われました。

hana ordinary花「ジョバンナって云っちゃってるしwww」

12JAN09 218そら「ソフィ・・・ ジョバンナしゃん!!


遥か、遠いロシアの地でジョバンナが見た現実は…

戦争を生き延びた男(仮にアントニオとしましょう)が、
現地の女性、そして子供と、倖せに暮らしている姿でした。

26MAY10S.jpgそら「なんでしゅってぇっ!?」

05FEB09 039 SORA iyadeshuそら「ジョバンナしゃぁぁんっ!!」


アントニオは生きていた。
でも、もう二人の道が永遠に交わる事はない。
帰りの列車の中、
絶望に身も心も疲れ果てたジョバンナ。
光を亡くしたその瞳に映ったのは、
車窓の外に、何処までも、何処までも広がる、
ひまわりの花畑だったのです。。

hana ordinary花「ちょっと、これwww」



こういった話が(仮に)あったとして、
更に、ジョバンナとアントニオが出会ったのが、
新九郎君が落とし物係を務めた例のイベントだったとしましょう。

悲しい現実をつきつけられたジョバンナが
どういった行動をとるか?

もうおわかりでしょう。

二人の出会いの場所へ、
凡てを返しに来たのですよ。
ペンダントをこの地へ捨てる事で、
過去との決着をつけたのです。

それが、ジョバンナが未来へ向けて歩きだす
小さな一歩になればいい、と、
そう考えながら、何故か私が涙ぐんだりしていて
我ながらこの妄想の才には恐れ入ります。

hana ordinary花「それ、ソフィア・ローレンの「ひまわり」じゃがなwww」

sora mumuそら「ジョバンナしゃんでしゅ!」


まぁ、いろいろな説があるとは思いますが、
これがこの件の真実… かも知れませんね。


sora face1そら「知れないでしゅね…。」

hana uhe花「なんか痛い人らがおりよる…。」











いつも読んでくださっている皆様、有難う御座います。

新九郎譚 「続・落し物」


今回は久しぶりに、
我らが新九郎君のお話をしましょう。

新九郎君は事情があって
様々な公共のイベントに関わる事があるのですが、
昨年、落とし物係を経験しました。

ゴミに見間違えるほどの猫の写真が
届けられた時、
受理作業の手間を思って
心の中で舌打ちした新九郎君でしたが、
その写真を探しに現れた老人が
写真を見るなり抱きしめて泣き崩れた姿を見るに際し、
新九郎君は己の浅慮を大いに恥じる事となりました。
人生到る所に学びの機会アリ、です。

昨年そのような経験をしていますので、
今年の新九郎君は一つ成長しています。
どんな品にも人の想いがこもっている事を知っています。
それを強く意識しての勤務となりました。

今年は予想以上の数の物品が届けられたそうです。
拾得物というのは法律で厳しく管理されますので、
その手続きは大変ですが、
今年の新九郎君は一味違いますので、
元の持ち主にお返ししなければならない、という
使命に燃えて、それはそれは丁寧に扱いを行ったそうです。
(本来、そうあらねばならないのですが)

さて…
この場で詳しい内容を語る事は出来ませんが、
特別にあるアイテムについてお話しましょう。
それは、男女の名前が刻印された
ペンダントでした。

結婚を記念するものでしょう。
二人で共有する一つの思い出、
どちらが欠けてもならぬ、
否、二人でなければ成立することすらない、
厳粛な誓約の儀式。
その精神的な結束を
形にして身に付けていたい、という
二人の純粋な想いが
伝わってくるような、
可愛らしいペンダントが届けらたのです。

(これは絶対にお返ししなければならない!)
新九郎君は心の中でそう叫び、
その身は自ずから引き締まりました。

心配そうに問い合わせにくるカップル、
ペンダントを見た瞬間に
弾けるような笑顔になる二人、
嬉しそうに去ってゆく後ろ姿…
そんな場面を想像し、
大事なアイテムの返却という
一大イベントに関われる事を、
新九郎君は強く誇りに感じて、
これから起こるロマンチックなドラマに、
一人、胸を熱くしていました。
返却時の台詞まで考えていた、というのですから、
どれ程に新九郎君が入れ込んでいたのかが
わかります。



さて、夜になり、イベントは終了し、
来場客は皆、帰っていきました。
結局、誰もペンダントを取りには来なかったそうです。

まぁ、現実というのは常に散文的なものですね。






いつも読んでくださっている皆様、有難う御座います。

普通の日々


私とボクシングは最早20年の付き合いとなった。
ジムで一緒に汗を流す面子も
気心のしれた良い仲間である。

さて、その中でA氏は先日膝を痛め、
サンドバッグを打つスィングがゆっくりだ。
前に出す足の膝を痛めると
パンチに体重が乗らなくなるので、
ここは無理せず、ゆっくりとコンビネーションを
確認するかのような、穏やかな動きだ。

B氏は長年膝を痛めており、
こちらは30代後半でありながら
すでに70代の膝と診断されているほど
関節が摩耗している。
軟骨は再生しないので、
ガッチリとサポーターで固めての
ワークアウトとなるが、
パンチの基本となる下半身の粘りがないため、
かつてのハードパンチが
今では28サンチ砲の空撃ちのようになってしまった。

C君は常にオーバーワーク気味なのだが、
ついに足首の靭帯を痛めてしまって
いつもの軽いフットワークを踏めずに
ほぼ棒立ちの軽いシャドーを流している。
皆、満身創痍だ。

そんな選手たちを眺めながら、
ジムの館長がこう云った。

「やっぱり普通が一番だな。
いつもやってる当たり前の動きが出来ることが
いかに有難いものか、
こういう時によくわかるよな、はっはっは!
うむ、普通が一番!一番!」


そうなのだ。
本当の幸福は、失くして初めて気が付くものだ。
その時はそれで当たり前なのだが、
失くして初めてその当たり前の有難さに気付くのだ。
人生は、常にこの繰り返しだ。
同じ感情を、もう何度経験しただろう。
だから、今を大事に、などといつも思うのだが、
気が付いたら忘れている。
普通が普通になってしまっている。

いつも、花とそらと一緒に座って夕陽を眺めた
この相模川の水のほとりで、
私は一人、そんな事を考えた。





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